母親教祖のみうらじゅん
みうらじゅんさんは、映画館の前に展示していた高さ2メートルのゴジラの人形を盗んでしまった。新聞やニュースで報じられた1979年。覚えている方も多いと思います。
そのニュースをみうらじゅんさんは実家でテレビで見ていました。すると、おもむろに、みうらじゅんさんを前にして、みうらじゅんさんのお母さまがコー言い放ちます。

コレ、あんたやろ!
こんなことするのは、
アンタしか、いいひん。
息子のみうらじゅんさんが、そうだったと白状してしまったのか、やり過ごしたのかはわかりません。たぶん、しらを切った。白状するとゴジラを返すハメになる、ソレはしたくない。窃盗犯罪に対する呵責はある、してはいけない事をした反省もある。
と同時に、お母さまの「あんたしかいいひん」という言葉には、”誰にもできないことを成し遂げてしまう魔性の私の子”という意味が含まれていることをみうらじゅんさんは瞬時に理解していました。
人のものを盗むことは決して許されない。
普通であれば、この子の育て方を誤ったと悔やむ、世間様への恥も感じる母として。
ところがこの子にしてこの母なのか、この母にしてみうらじゅんなのか?母は誇りをもって詰問した。
この母親の衝撃的は言葉を、なんと、みうらじゅんさんは、息子に向けられた最高の賛辞と受け止めた。どこまでもヘタレない、逆境を勝機に変えて見せるみうらじゅん凄し!
みうらじゅんと岡本太郎「ない仕事」という発想
高度成長期の少年時代、「グラスの底に顔があってもいいじゃないか!」という岡本太郎さんのウイスキーのテレビCMが流れたことがあります。覚えているでしょうか?
1970年の大阪万博のモニュメント=太陽の塔を制作した世界的芸術家の岡本太郎さんがその6年後にテレビCMに登場し、挑発するように「いいじゃないか!」と言い放つ。
私は20歳の頃、通院しなかったものの神経症のような症状になったことがあります。人間不信で不安感情に苛まれて、過呼吸になったり、腕がしびれて痛む、という時期がありました。
そんな時、岡本太郎さんの真っすぐで嘘が無い言葉が響き、録音して何度も聞いていたことがあります。
「グラスの底に顔があってもいいじゃないか!」という岡本太郎さん の言葉を本書でみうらじゅんさんは冷静にそしてロジカルに分析しているのが面白い。
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